轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
人間の六十にまたがる身が、何で、これ以上の浮雲や虚栄を望もうや。
武人の一生というものは、毎日、人間の浮き沈みと、栄位や名利の儚さを、朝に見、夕べに見あきている。
しかも自分は、周囲の白眼と嫉視の中におかれているが、ともかく、主君家康より信ぜられ、岡崎の城を預かり、一家眷族も、それぞれ、食と所は得ているのだ。
何の、それに、不満があろう。
不満は、時代にくらい、井の中の蛙たちの独善的な強がりである。大坂軽視、狭小な反秀吉の危険思想にある。これこそ、やがては、徳川家を過らすものでなくて何であろう。
文化の低さは、上方の比でない。その低い眼孔で、この数正を、親敵派と見、つねに一藩の和を欠いていることは、自分の非とはおもわないが、主君にたいしては、申しわけない。その点で、数正はたしかに、味方の中の害虫といえよう。みずから、去るにしかずである。
が、去って、大坂方の一員となっても、自分は、秀吉のふところにあって、浜松と大坂との和親をはかり、ここの三河武士が、家康をして、将来に大きな過失をさせないように、陰で、努めることはできる。
それこそ、自分ならでは出来ない、忍辱の孤忠ではあるまいか。