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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

閉会の式として、

(いずれ協力一致して、幼君を奉戴、異背あるまじき事)

の誓書を納れ、これを故主信長の霊前に供え、併せて、評定の結末を直ちに報告することになった。

その日は、七月三日。

信長の月辰――月の命日は、昨日の二日であった。もし会議が順調にすすめられていたなら、このことは、きのうの命日に行われるはずだったが、勝家の保留で一夜越したため、忌日追福の営みも、ついに一日延ばされてしまったわけである。

諸将は、詰所へさがって、まる三日間の緊張から解かれると、やれやれといいたげに、各※(二の字点、1-2-22)、夕風に涼を入れて、家臣たちの宥わりに寛いでいた。

多くの同朋衆は、手分けして、各詰所の小部屋で、一筅をそそぎ、茶を献じ、香を薫じて、犒いを扶けていた。

その間にもう清洲の臣が、

「御小憩がおすみに相成りましたら、酉の下刻のお土圭をあいずに、二の丸の御仏殿までおわたり下さるように」

と、触れあるいていた。

汗をぬぐい、喪服にあらためて、諸将は刻を待っていた。

蚊うなりのする大殿廂に、新月の影がほそい。

遠く土圭が鳴っていた。

喪服の武将たちの影が、もの静かに、二の丸へ渡っていた。