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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
08 第八分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页
そして、秀吉の病気とは何病であるか――とか、急に帰国するならば、なぜ昨夜のうちにわが宿所へでも沙汰してくれぬか。さすれば自分もすぐ出向いて病状を見舞い、諸事打ちあわせも遂げたのに。……などと意地の悪い質問のみ発したが、老来、至って耳の遠い大島雲八には、その半分もよく聞きとれないらしく、
「はい。はい。……さればで。いかにもな」
何をいっても、馬耳東風である。そして独り合点を繰り返しているばかりの相手だった。
まるでのれんに腕押しである、とは思いながら、勝家は、表向き重大な使者に、こういう耄碌武者を向けて来た秀吉の底意にたいして、何とも業腹でならなかった。
いくらなじっても、なじりがいのない相手ではあったが、その業腹の余憤をもって、立ちがけにこう訊ねた。
「使者。――いったいおぬしは、幾歳になるのか」
「さればで。……はい」
「年をきいておるのじゃよ。――おぬしの年齢を」
「御意で」
「なに」
「はははは」
まるで揶揄されているような気がする。憤ッとした顔を雲八の耳のそばへつき出して、勝家は破れ鐘のような声でいった。
「汝は、今年、何歳に相成るか。――そのことを訊ねておるのじゃ」