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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

そのくせ、次の事実は、およそ柴田家の一族で、心ある者どもは、みな憂いていることだった。

(御養父と御養子とのお仲が、あのようにお冷たくては、柴田家の末も案じられる)

勝家には、もうひとり、ことし十六になる養子があった。

柴田権六勝敏だった。

情愛にも、日常の感情にも、とかく偏しやすい性格の勝家は、

(勝豊は因循で、はきはきせぬやつじゃ。子のような気心がせぬ。それにひきかえ勝敏は、邪気もなく、飽くまでわしを父としてよう馴つきおる)

これを、口にもいうのである。

けれどなお、その気に入りの勝敏にも増してもっと偏愛していたのは、甥の玄蕃盛政だった。

玄蕃を愛することは、甥とか子とかいうものを越えて、

「甥めは、わが家の至宝じゃて――」

と、その凡情に溺るるような傾きさえあった。

従って、玄蕃につながる弟の久右衛門安政や三左衛門勝政などまで、よく目をかけて、まだみな二十五、六の若さであるのに、各※(二の字点、1-2-22)へ要地の一城一城を持たせていた。

これらのお覚えめでたい鍾愛の親臣中にあって、ひとり養子の勝豊のみは、養父からも忌まれていたし、佐久間兄弟からも冷やかに視られていた。