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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

“惟朝の重臣、中興の良士なり”

との勿体ない詔旨が宣らせ給うてあった。これを拝し、泉下の信長は、望外の光栄と身の本分に泣いたであろう。

善不善、凡非凡、人間としての信長はどういわれようと、彼の弓矢は、まさしく九重の御階に立ち匂い、彼の臣子一片の忠誠は、はしなくもこのありがたい宣に浴して、千載、国土とともにあるものとなった。

あわせて彼は、父織田信秀の、皇室中心の祖承をも完うしたものといえよう。まぎれなく、忠誠と臣道において、織田父子も、二代をかけた。信長は父逝く日まで、父にひとかたならぬ心案じをかけていた不孝の子であったが、今日、その父へも、大孝の子となったのである。

四十九年ノ夢一場

威名什カ存亡ヲ説カン

請フ看ヨ火裡の烏曇鉢

吹イテ海花ト作ッテ遍界ニ香シ

これは笑嶺和尚の偈である。

大葬礼の式場は、百二間の火屋霊堂のうちに執り行われた。五色の天蓋は目にきらめき、千万の燈明は星に似、沈木のけむりは、幢旛の翻るあいだから流れひろがって、数万人の会者のうえに、むらさきの雲を作していた。

僧侶だけでも、五岳の碩学、洛中洛外の禅律、八宗の沙門、余す者なく集会して、九品の浄土、五百阿羅漢、三千の仏弟子、目前にあるがごとし――と当時の目撃者はその状況を誌している。