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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

08 第八分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,758 字 · 383 页

青空文庫

(明智方、その後の動静は、かくかく也)

などと早打して、その旗幟へ鶴首していたものだった。

大坂の丹羽長秀なども、

(まずは、彼の来るを待って)

という態度で書簡を通じていたし、中川瀬兵衛、高山右近、池田信輝、蜂屋頼隆等、みな同様に心を寄せていた面々である。

わけて高槻の高山右近と茨木の中川瀬兵衛の二将は、在城の地も近いので、秀吉が尼ヶ崎辺に着いたと聞くと、すぐ一部の手勢をつれ、また各※(二の字点、1-2-22)、ことし八歳ほどになる質子を伴って、秀吉の休んでいる禅寺へたずねて来た。――陣門の士は、前後して来た中川瀬兵衛へも高山右近へも、

「殿はただ今、お寝み中ですが」

と答えたのみで、二将の来会を狂喜して、あわてて取次ぐなどということはなかった。

ふたりはやや意外だった。

瀬兵衛も右近も、内心、自分たちの向背が持つ価値と力を知っている。

信長の生前までは、二将とも明智の麾下に置かれていた者である。その兵力ぐるみ一方の陣営へ転じて来ることは、敵味方の比率に二倍の狂いを生じさせるわけになる。

また、瀬兵衛は茨木の城主だし、右近は高槻の城を持っている。この領内を通らず京都へは出られないし、明智勢と接触はできない。