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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

帝もまた姫の「たゞ人」でないことを認める。しかも帝は一度姫を見て後には、後宮の女たちに対して全然興味を失う。多くの女に優った美人と思っていた人も、姫のことを思うと、人でないように感ぜられる。かくて帝は、女を遠ざけて「たゞ一人」で暮らすことになる。すなわち現実の世界の代表者は、超自然者に完全に征服せられる。

そのあとに最後の段が来る。そこでは現実の世界が全体として超自然界に対照させられている。春ごろから月を見ては泣いていた姫が、いよいよ八月の月のころになって、翁に自分の素性を打ちあけこの世を去ることを告げる。自分は月の都の人である、宿命でこの世へ降りて来たが、今は帰るべき時になったと。そこで翁をはじめ帝その他の人々の嘆きが始まる。姫をこの世に留めようとして現世のあらゆるてだてをめぐらす。昇天の当日には二千人の兵を派して翁の家を衛らせる。築地の上に千人、屋の上に千人、(これは物理的自然においては不可能であるが、心理的には可能である、)母屋のうちは女どもに守らせ、かぐや姫は塗籠に入れて嫗が抱いている。翁は塗籠の戸口に番をする。しかしいよいよ大空から迎いの群れが来ると、人の守りは何の力もない。