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にほんせいしんしけんきゅう
日本精神史研究
和辻 哲郎
推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页
の漢文序に「感二鬼神一」と書いたところを、仮名序に「おに神をもあはれと思はせ」としたのは、この事を証明する(同一一六一―六二)。後世、「あはれ」という言葉に哀の字をあて、ただ悲哀の意にのみとるのは、正確な用法とは言えない。「あはれ」は悲哀に限らず、嬉しきこと、おもしろきこと、楽しきこと、おかしきこと、すべて嗚呼と感嘆されるものを皆意味している。「あはれに嬉しく、」「あはれにをかしく、」というごとき用法は常に見るところである。ただしかし、「人の情のさま/″\に感ずる中に、うれしきこと、をかしきことなどには、感ずること深からず、たゞ悲しきこと憂きこと恋しきことなど、すべて心に思ふにかなはぬすぢには、感ずることこよなく深きわざなるが故に、しか深き方をとりわきて」、特に「あはれ」という場合がある。そこから「あはれ」すなわち「哀」の用語法が生まれたのである(同一一六一下)。
宣長の用語法における「物のあはれ」がかくのごとき意味であるならば、それは我々の用語法における「感情」を対象に即して言い現わしたものと見ることができよう。従って彼が、これを本意とする文芸に対して、哲理の世界及び道徳の世界のほかに、独立せる一つの世界を賦与したことは、時代を抽んずる非常な卓見と言わなくてはならぬ。