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にほんせいしんしけんきゅう

日本精神史研究

和辻 哲郎

推古時代における仏教受容の仕方について「思想」1922(大正11)年7月<br>仏像の相好についての一考察「思想」1922(大正11)年5月<br>『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について「思想」1922(大正11)年8月<br>お伽噺としての『竹取物語』「思想」1922(大正11)年11月<br>『枕草紙』について「思想」1922(大正11)年9月<br>『枕草紙』の原典批評についての提案「思想」1922(大正11)年9月<br>『源氏物語』について「思想」1922(大正11)年12月<br>「もののあはれ」について「思想」1922(大正11)年10月<br>歌舞伎劇についての一考察「思想」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 208,277 字 · 415 页

青空文庫

従って彼らは、痛みを覚えた幼児が泣き叫んで母を求めるように、病めば必ず熱心に願をかける。わが国の確実なる記録の最も古いものは法隆寺薬師像及び釈迦像の光背銘文であるが、両者はいずれも労疾による誓願を語るのである。がこれを、ある人々のように、「功利的」と呼ぶのは正当ではないであろう。彼らの信仰の動機は、物質的福祉のために宗教を利用するにあるのではなくして、ただその生の悲哀のゆえにひたすらに母なる「仏」にすがり寄るのである。この純粋の動機を理解せずには、彼らの信仰は解し得られないと思う。

しかしながら、彼らがいかに現世的であるにもしろ、彼らは現世を限定する大いなる事実からのがれることができぬ。その事実とは、死である。そうしてそこに彼らの悲哀が頂上に達する。この悲哀のうちにすがり寄られるところの「仏」は、彼らの持ち得る最高の憧憬に答えるものとして、また彼らのうちに最深の意義を開顕した。ここに彼らの「彼岸」に対する理解が始まる。「彼岸」とは彼らにとって解脱の世界ではなくして死後の世界である。死後にこそ真実の生活がある。そうしてそれをこの人の姿をした仏が保証する。