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わせだだいがく
早稲田大学
尾崎 士郎
尾崎士郎『早稲田大学』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「早稲田大学」凡例、早稲田大学、早稲田大学について、風蕭々、学校騒動。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,204 字 · 220 页
その日の朝、早稲田の大隈邸には夜あけがたから、来訪者があった。門をたたいて面会を強要したが、護衛の警部が出て、二、三回押問答した上で追いかえした。壮士たちは口々に漢詩を声高く朗吟しながら、伯爵邸の石塀づたいに裏道を江戸川の方へ引返していった。
つめたく大気の澄みとおった朝であった。大隈は朝飯がすむと、久しぶりで邸内の雑木林の中の道を歩きながら深呼吸をした。昔ながらの習慣だったが、この一、二ヶ月そんな余裕はなかった。
会議のひらかれるのは午前十時である。
その日、いつになくすがすがしい気持であったのは、天気のいいせいもあったが、しかし大勢の動きはもう大体推量がついていたし、今日の御前会議にしたところで彼に詰腹を切らせようという段どりの下に行われようとしていることは明白であった。力尽きたというかんじではなく、むしろ、最後までやりとおしたという気持が彼の心に英雄的な昂奮を唆るのである。大隈は、もはや身に迫る危険なぞを意に介していなかった。前の晩、彼の手もとへ届けられた黒田の手紙にも黒田らしい人間味があふれていた。彼はフロックコートのポケットの中へ入れてきたその手紙をもう一度とりだして膝の上でひろげてみた。