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わせだだいがく

早稲田大学

尾崎 士郎

尾崎士郎『早稲田大学』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「早稲田大学」凡例、早稲田大学、早稲田大学について、風蕭々、学校騒動。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,204 字 · 220 页

青空文庫

大隈重信が死んだのもたしかその翌年であったろう。天野派の教授はもちろん学校外に放逐されたが、そうかといって高田派をもってこれに代えるというわけにもゆかなかったらしい。天野色もなければ高田色もない一種の中間的存在だけが表面へうかびあがってきた。文部省がこの問題の解決に対してどの程度に関与したかということは一学生である私の知るよしもないことであるが、私は当時の予科長(後の高等学院)であった安部磯雄と、文科の科長であった金子馬治(筑水)によばれ、速かにこの運動から手をひくべきことを勧告された。対談中、金子先生はハンカチで顔をかくして泣き、私もまた涙をおさえることができなかった。私は特に安部教授の好意と信頼をうけていたからである。しかし、新しく形を整えた早稲田大学には、もはや私たちの魅力の対象となるべきものはなかった。学長の選任についても、高田色もなければ天野色もない、つまり、早稲田の歴史的伝統とつながりのうすい人の中から選ばなければならぬことが条件とされたらしく、もっとも無難な人物として、講師であった平沼淑郎(騏一郎氏の実兄)が推挙された。

以上が、この事件の、私の眼に映った全貌であるが、早稲田大学が学校らしい形式を備えてきたのもそれから以後であろう。