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ばんしゅう

晩秋

山本 周五郎

「講談倶楽部」博文館、1945(昭和20)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,792 字 · 23 页

青空文庫

他の二人も名はわからないがそれぞれ重い役に就いている人物だということは推察がついた。――いよいよ御吟味が始まるのだ、都留はそう思った、かれらは恐らくその下調べに来るのだ、そして間もなく御裁きになるのだろうと、……そうなればもう主計に近づく機会はなくなってしまう、都留はうしろから追いたてられるような、息苦しいおちつかない刻を過した。

客たちのうち最も繁く来るのは鈴木主馬だった。主計と話してゆく時間もながく、そしてかなり声高になることが度たびあった。そういうとき都留は襖の際へすり寄って、よくかれらの話し声に耳を澄ました。どんなに声高になっても話の始終を聞きとれるわけではなかったが、きれぎれに響いてくる言葉をたび重ねて聞くうちに、おぼろげながら事情がわかりだしてきた。

それは驚くべきものだった。

都留の推察したとおり、三人の客が来るのは吟味の下調べだった。然しその下調べの指図をするのは実に主計自身なのである。――そんなことがある筈はない、都留はなんども自分でうち消した、――裁かれる当人が裁きの指図をする、そんな不法なことがある筈はない。だが事実はうち消すことのできないものだった。