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あさがおぞうし

朝顔草紙

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1938(昭和13)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,019 字 · 29 页

青空文庫

「お上の御意でございますわ、御拳の鷹の餌鳥を獲るために、鳥刺し組の者は領内何れの屋敷へも出入り勝手と、御触れが出ているのでございます」「餌鳥を獲るなら人の屋敷へ入るより、野山へ参れば宜しゅうござろう」「さあ、それが……」そう云って小雪は口を噤んだ。

信太郎は益々不審に思ったが、どうしても小雪はそれ以上の説明はしなかった。是には必ず何か訳がある、そう思った時ふと、信太郎は昨夜門番へ槍を預けたことを思いだした。

――そうだ、こんな事は却って門番などの方が精しいかも知れぬ。

そう気付いたから直ぐ門番小屋へ出掛けて行った。そこには五十歳あまりになる老番士がいて、丁寧に信太郎を迎えた。

「預けた槍はあるだろうな」「はい、お預り申してござりまする、お持ちなされまするか」「ちょっと見せて呉れ」

老番士は直ぐ小屋の奥から槍を持って来た。信太郎が受取って見ると、穂先は「麦穂」と呼ばれる四稜の大身で、柄の千段巻の下と、鐓に近いところが青貝散らしになっている、有りふれた道具ではない、

「さっき鳥刺し組の者が庭へ入って来たのを知っているか」槍を見ながら何気ない調子で訊いた。