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あさがおぞうし
朝顔草紙
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1938(昭和13)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,019 字 · 29 页
「存じて居りまする、二度や三度のことではないので、実に心外に耐えませぬ」「御城主の御触れだそうだな」「なあに、みんな腹黒い奴共の企んだ仕事でござりまするよ」
老番士は重い口調で云った、「――本当に餌鳥を獲るためなら、三階山へでも行けば余るほど居りまする。それを……神尾采女がお上を焚きつけて、こんな街中の屋敷へ出入り勝手という御触れを出させたのは、あの通り乱暴狼藉をさせたうえ、万一これに逆いでもすれば、御触れを盾にとって罪に陥れようという卑怯な手段でござります」「だが如何になんでも御老職たる当家まで、それを黙っている法はあるまい」
老番士はちらと信太郎を見上げて、
「失礼でござりますが、貴方様は安倍様の若様でいらっしゃいましょう」「知っているか」「はい、存じ上げて居ります。安倍様はあのとき御退身遊ばして良い事をなさいました、いま貴方様は『御老職たる当家まで黙っている法はあるまい』と仰せられましたが、現に御相談役の河内信濃様が、鳥刺しの黐棹を踏み折ったかどで、永の閉門というきびしいお咎めを受けた程でござります」「然し、それを何とも云う者はないのか」「ござりました」