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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页
(一〇)登山競争
「止せ止せ、こんな家の厄介になるな」
と、一行は尻をたたいてこの家を出たが、婆さん一向平気なもの、振向いてもみない。食物本位の宿屋ではなかったと見える。
三、四町行くとまた一軒の汚い旅人宿、幸いここでは、鰌の丸煮か何かで漸く昼飯に有付くことが出来た。東京では迚も食われぬ不味さであるが、腹が減っているので食うわ食うわ。水中の津川五郎子八杯、未醒子七杯、髯将軍と吾輩六杯、その他平均五杯ずつ、合計約五十杯、さしもに大きな飯櫃の底もカタンカタン。
(一〇)登山競争
町付村から、山道は漸く深くなり、初めは諸所に風流な水車小屋なども見えたが、八溝川の草茂き岸に沿うて遡り、急流に懸けたる独木橋を渡ること五、六回、だんだん山深く入込めば、最早どこにも人家は見えず、午後四時頃、常州第一の高山八溝山の登り口に達した。登り口には古びた大きな鳥居が立っている。ここから山道は急に険しくなるのだ。絶頂までは一里半、頂上間近になれば、登山者の最もくるしむ胸突八丁もあるとの事だ。
例の剛力先生なかなかやって来ない。鳥居の下で待つこと約三十分、杉田子、衣水子、木川子など付添で漸くやって来た。