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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页
(一九)一里競争
と威張り出せば、誰も凹垂れたと見られるのは厭なものと見え、
「賛成賛成」と孰も疲れ切ったる毛脛を叩く。
「お前様達、一里駆ッこをするのかね」と爺さん達は眼を円くしている。
そこで農家の爺さん達にお頼み申し、重い荷物は尽く駄馬に着けて、近道を黒羽町まで送り届けて貰う事とし、黒羽町の宿屋は△△屋というのが一等だと聴いたのでそこと取極め、さて一行は半身裸体なるもあればシャツ一枚となるもある、内心困った事になったと思いながらも、程よく一列に並び、一、二、三の掛声で砂塵を蹴立てて一目散に駆け出した。
(一九)一里競争
先頭は誰ぞと見れば、腕力自慢の衣水子韋駄天走り、遥か遅れて髯将軍、羅漢将軍の未醒子と前後を争っていたが、七、八町に駆けるうちに、衣水子ははや凹垂れてヒョロヒョロ走り、四、五町にいた水戸中学の津川五郎子、非常なヘビーを出して遥か先頭に進み、続いて髯将軍、羅漢将軍等、髭面抱えてスタコラ走って行く有様は、全く正気の沙汰とは思われず、田畑の農民等は何事ぞと、腰を伸ばして眼を見張っているばかり。
吾輩はいかにと自分で自分を見れば、これはいかなこと! 昨日登山第一の元気はどこへやら、焼酎は頭へ上って、胸の悪き事甚しく、十二、三町走るか走らぬに、迚も堪らず、煙草畑の中へ首を突込んで嘔吐を吐く。