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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页
(三)洪水の悲惨
どうも分からん分からん、不思議な事もあれば有るものだと、二人は暫時顔を見合すばかり。鮮血は二人の身体から出たものでなく、また天井から落ちたものでもないとすれば、空中から飛んで来たものとほか思う事は出来ない。誰か友人中に死んだ者でもあって、その暗示が来たのではあるまいか。イヤそんな事もあるまいが、横断旅行の首途にこの理由の分らぬ血汐は不吉千万、軍陣の血祭という事はあるが、これは余り有難くない、それにこの大風! この大雨! 万一の事があってはならぬから、明日の出発は四、五日延期してはどうかと、断水坊平生の洒ツクにも似ず真面目臭って忠告を始めたが、吾輩はナアニというので、その夜はグッスリと寝込み、翌朝目醒めたのは七時前後、風は止んだが、雨は相変わらずジャアジャア降っている。
(三)洪水の悲惨
上野発水戸行の汽車は午前十時と聴いたので、さっそく朝飯を掻込み、雨を冒して停車場へ駆け着けてみると、一行連中まだ誰も見えず、読売新聞の小泉君、雄弁会の大沢君など、肝腎の出発隊より先に見送りに来ている。その内に未醒画伯の巨大なる躯幹がノッソリ現われると、間もなく吉岡将軍の髯面がヌッと出て来る。