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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう

本州横断 癇癪徒歩旅行

押川 春浪

「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页

青空文庫

(一二)汗臭い握飯

ことにこの山中に生ずるサヤハタという木は、水中に在ってもよく燃えるので、その皮を炬火として大雨中でも振回して歩く事が出来るそうだ。先刻通ったあの金性水の所には、昔時四斗樽程の大蛇が棲んでおって、麓の村へ出てはしばしば人畜を害したので、須藤権守という豪傑が退治したという口碑が伝わっている。現に今でもこの山中にはなかなか毒蛇が沢山いるという事だ、御用心御用心」と、首を縮めて腰の辺を撫でている。

(一二)汗臭い握飯

その話は面白いが、しかし吾輩は山登りの汗が引込むに随い、だんだんと寒くなって仕方がなくなった。それもその筈である。吾輩は帽子もズボンもズブ濡れで、腰から上は丸裸、山頂の雲霧を交えた冷風がヒューヒュー吹き付けるのだから堪ったものではない。シャツや上衣は今朝剛力の担ぐ荷物の中へ巻入れてしまったので、暑い道中は誠に結構であったが、この寒さでは閉口閉口。ブルブル震えながら山頂に立って、

「オーイ、剛力ィ――。オーイ、剛力ィ――」と叫んで見たが、応うるものは木精ばかり、馬糞剛力どこをマゴ付いている事やら。

その内に再び雨さえ降って来たので、コリャ堪らぬ堪らぬと、杉田子はお年寄り役だけに、若手の面々を指揮して枯木枯枝を集めさせ、廃殿の横手に穴のような処を見付け出し、頻りに焚火をしようと焦ってござるが、風が吹く、雨