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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう

本州横断 癇癪徒歩旅行

押川 春浪

「冐險世界 第四卷第拾貳號」博文館、1911(明治44)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 页

青空文庫

翌日午前七時、昨日までの雨に引替えてギラギラ光る太陽に射られながら水戸出発、右に久慈川の濁流を眺めつつ進む。数里の間格別変った事もなく、ただ汗のだらだら流れるばかり。だんだん田舎深く入込めば、この道中一行の呆れ返らざるを得なかったのは、この地方住民の懶惰極まる事である。孟子の所謂恒産無き者は恒心無しとでも謂うものか、多少でも財産や田畑のある者は左程でもないようだが、その他の奴等に至っては、どれもこれも、汗水流して少しばかりの金を儲けるよりは、ゴロゴロ寝ていた方が楽だといわぬばかり。どこの家を覗いてみても、一人か二人昼寝をしておらぬ家は殆んど一軒もない。男は越中褌一本、女は腰巻一枚、大の字也になり、鼻から青提灯をぶら下げて、惰眠を貪っている醜体は見られたものではない。試みに寝惚け眼を摩って起上った彼等のある者を掴え、

「暑いのは誰でも暑いのだ。ゴロゴロ昼寝ばかりしていずに、ドシドシ草鞋でも筵でも作って売ったらどうだ。寝ている暇に少しでも金儲けが出来るではないか」といえば、彼等は面倒臭いといわぬばかりに、

「この暑いに――、沢山の儲がねえだ」と、鼻の先で笑っている。