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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

家へ帰って参りまして、茫として何物も手につきませんでした。他の人々から、どうかなさいましたのと云い寄られても、それに答える事も出来ませんでしたの……二時過に床に入りましたけど、あなたの事ばかり思い出して……眠られませんでしたの。すまないという心で私のハートは満ちておりました。

束縛を呪い、自由を渇仰する私は……この泪する淋しい妹を慰めて下さいませ……。

いつもいつも、どうせ生きるなら、もっともっと意義のあるように生きたく……望んでおりますけど、けれどけれど私の願いはすっかり裏切られて了いますの。ミゼラブルな人生を……歎き悲しみましたの。歎いたとて応える何物もありませんでした。玉雄様――こう叫んだ時に、あの四月十日がほんとうに慕わしくなりますの。そうして、まぼろしのようにあなたの面影が表われ……私はたまらなくなりました。そして、そのまぼろしに対して私は何か囁きたかったのですけど、併しそのあなたの面影は長くは続きませんでした。なつかしく、また慕わしかったけれども、私はあなたのまぼろしに無言のうちに別れを告げてしまったのです。噫、こうした中にも物淋しい生命は刻々と過ぎて行きます……筆を止めて、静かに黙して、祈るともなく祈る時……私の全身は氷のように冷たく……私の瞳はいつしかうるおいをおぼえました。