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とうきょうじんのだらくじだい
東京人の堕落時代
杉山 萠円
「九州日報」1925(大正14)年1~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页
更に、バラック都市のアクドイ色彩は、夜となく昼となく彼女達を刺戟した。着物道楽の流行で、震災前よりも一層デカダン式にリファインされた男性の姿は、彼女達を朝な夕な眩惑した。
第一の職業しか知らぬ新米の職業婦人は、次第に第二の職業を習いおぼえて来た。
そればかりでない。
震災後の東京に於ける生存競争が、震災前のそれよりも数層倍烈しく乱雑になった。弱い彼女たちを死に物狂いになるまでいじめ上げた。これも彼女たち職業婦人を堕落させる有力な原因となった。
時は金なり、金は生活也。生活の真髄は享楽なりという実際の証拠が、彼女達の眼の前に朝から晩まで走馬燈の如く廻転した。
時、金、生活、享楽――即ち物資文明の産物たる東京のバラック、イルミネーション、エレベーター、店頭装飾、そのようなものの間を駈けめぐる電車、自転車、荷車、汽車、オートバイの響は砂煙を上げ、天地に轟きつつ、まだ気の弱い、生れ立ての職業婦人たちの神経を戦かした。
自分の持っている限り無形の資本を、一日も早く有形の資本に易えて、生活の安定を得ねばならぬ、という事以外に彼女たちは何事もわからなくなった。