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とうきょうじんのだらくじだい

東京人の堕落時代

杉山 萠円

「九州日報」1925(大正14)年1~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,226 字 · 247 页

青空文庫

「いつでもいいって!」

「左様で、ここにありますのならどれでも、エヘ……」

「これはどうだね」

「ヘエ。これは三十五円で……」

「半夜かい、終夜かい」

「半夜で、室とお料理だけが別で御座います。終夜だと今二十円お願い致しますので……エヘ」

「高価いな。じゃ、これは……」

「みな同じで御座います……」

男の眼はいよいよ警戒的に光って来た。

記者は社用の名刺以外に、或る特殊な名刺を持っていたので、よっぽどそれを出して見ようかと思ったが、さりとはと思い切ってここを出た。

その後、或る友人にこの話をしたら、

「それあ新発見だ。恐らく最高級の奴だろう。早速行って見よう」

と云った。記者が高価い事を説明して押し止めると、彼は高らかに笑った。

「アハ……。馬鹿な……。それあ出たらめだよ。君は体よく追っ払われたんだ」

然るにその友達もその後そこへ行って失敗したと見えて、帰って来るとすぐ記者に電話をかけた。

「君。駄目だったよ、あそこは。誰か紹介者がなくちゃ……君は例外らしいぜ……」

「そうかなあ……じゃ、名探偵だな、僕は……」

「馬鹿な……いい椋鳥に見えたんだろう」

文明病としての神経痛