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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

、たとえわずかな時間にせよ、道江の問題に夢中になって、朝倉先生のことをまるで忘れてしまっている。何という矛盾だろう。いや、何という軽薄さだろう。

彼は、自信を失った人のように、力なく首をたれた。徹太郎叔父に対しても、道江に対しても、恥ずかしさで胸がいっぱいである。

「何しろ、朝倉先生の退職の理由が理由だし、君たちの行動を当局では極力警戒しているらしいんだ。万一ストライキにでもなったら大変だぜ。」

「ストライキには、僕、絶対に反対するつもりです。」

次郎はやっとそれだけ答えた。ストライキ反対の理由が、当局のためでなくて朝倉先生のためだ、ということをつけ加えたかったが、まだそれを言うだけに気持がおちついていなかったのである。

「それならいいけれど、――」

と、徹太郎はちょっと考えてから、

「しかし、昨日お父さんにきいたんだが、君は血書を書いたっていうじゃないか。」

「ええ。……書きました。」

「それがきっと大きな問題になると思うね。」

「僕はストライキをやらないためにあれを書いたんです。みんなもその条件であれを出すことにきめたんです。」

「しかし、ストライキになってしまったら、君の考えとはまるで反対の目的で書かれたことになりそうだね。