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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
「じゃあ、僕たちだけで県庁に行きます。」
と、新賀がいつものぶっきらぼうな調子で言うと、どうしたわけか、今度はいやに落ついた、いくぶんあざ笑うような顔付をして答えた。
「知事閣下が君たちにお会い下さると思うのか。……まあ、ためしにお訪ねしてみるがいい。」
しかし、何よりも彼らの反感をそそったのは、彼らと校長との会見がはじまると、用もないのに、いつも西山教頭がのそのそ校長室にはいって来て、壁ぎわの長椅子に腰をおろすことだった。
西山教頭は古い型の英語の先生で evil という字をエヴィルと読んで、若い英語の先生たちに蔭では「エヴィルさん」と呼ばれているほど発音の誤りが多い。それにも拘らず、訳解の方では文法がらめでびしびし生徒をいためつけるし、万事に規則ずくめで冷酷なところがあり、生徒たちには非常にきらわれている。その先生が三角形の瞼の奥にいたちのような小さい眼玉を光らせ、会見の様子を見張っているのだから、不愉快この上なしである。
しかし西山教頭は、単にはたで見張っているというだけでなく、しばしば自分でも口をきいた。大ていは校長が返事にまごついている時だったが、たまには、校長の言葉を途中でさえぎったり、訂正したりすることもあった。