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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
「悪い約束なんかしません。」
「じゃあ、かくさないで言ったらいいだろう。」
次郎はやはり答えなかった。
曾根少佐は、しばらく次郎の顔を見つめたあと、西山教頭と顔を見合わせ、何かうなずきあった。すると西山教頭は、その三角形のまぶたの奥に、いかにも沈痛らしく眼を光らせ、一わたりみんなを見まわした。それから右手をラッパのようにして口にあて、いくらか眼をおとして「えへん」と大きな咳をした。そして何か秘密なことでも打明けるように、声をひそめて話し出した。
「実は、曾根先生が配属将校としてのお立場から、今度の君らの行動について、いろいろとご心配下すっていたので、きょうはさっきから、私と二人きりで、とくとご相談をしてみたわけだが、だんだん先生のお話を承っていると、君らのこれからの行動次第では、容易ならん結果になりはしないかと心配される。それで、これは少佐のお立場上ごむりかとは思ったが、私たち二人が、一先ず学校という立場をはなれ、全くの個人として、君らと肚をわって話合ってみたい、そういうことに私からお願いして、実は校長先生にもご相談しないでこの席にやって来たわけだ。