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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
もし皆さんのお骨折によりまして、一般の父兄の方々には少しも心配をおかけしないで事件が解決する、というふうにでもなりますと、まことに結構であります。県といたしましては、実は、内々そういうことを皆さんにご期待申上げて、お集まりを願ったようなわけでありますから、どうかそのおつもりで、ご懇談をお願いいたしたいと存じます。」
父兄の中からは、しばらく誰も発言するものがなかった。「他の生徒に対する影響力」という課長の言葉は、いい意味にも悪い意味にもとれ、自分の子供の成績がさほどでもないのを知っている父兄にとっては、それがいよいよ不安の種になるのだった。
「平尾さん、いかがでしょう。あなたのご令息は成績はいつも一番であられるそうですし、校友会の総務もやっていられると承っていますが、あなたのような方から最初に何かご意見を出していただけば、他の方のご参考にもなると存じますが……」
課長が、しばらくして、意味ありげに平尾の父をうながした。すると、平尾の父は、
「いやあ――」
と、両手で白髪まじりの頭をうしろになで、ちょっと馬田の父の顔を見た。それから、かけていた金ぶち眼鏡をはずし、指先でしきりに眼のくぼをこすりながら、いかにも言いしぶるように、とぎれとぎれに言った。