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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

……これは実は県ご当局からのご注意もありましたことで。」

「しかし、生徒の方では勝手に集まっているだろうと思いますが、どうでしょう。」

「はい、それは、……校友会の委員だけでは、いつも自由に集まれるようになっておりますので。」

「その集まりにも、校長さんはまだ一度もお顔をお見せになっておりませんのでしょうか。」

「それも実は、県当局のご意見で、一先ずほかの教師が出て、懇談的に生徒の考えをきいてみよう、ということになっておりますようなわけで……」

父兄たちは、にが笑いをおしかくすのに骨が折れるらしかった。俊亮も、さすがに眼を見ひらいて、あきれたように校長の顔を見た。平尾の父は眼鏡をはずして眼をこすっており、馬田の父は憤然として課長の顔を見た。すると課長が言った。

「そのことについては、事件の性質上、この場合、配属将校にご苦労をお願いするのが一番適切ではないかと考えまして、実は西山教頭とお二人で、十分説得していただくようにお頼みしてあるのです。多分、きょうあたり、お二人でその席に顔を出されたのではないかと存じますが。」

この時、よれよれの浴衣に古ぼけた袴といういでたちではあるが、何となく気品のある眼鼻立ちをした白髯の老人が、だしぬけに立ち上って言った。