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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

「どうかなすったの?」

「返事をしないのに、かってにあがって来るやつがあるか。」

次郎はおこったように言った。が、すぐ、道江の眼を見ながら、

「何か用?」

「ええ、こないだ貸していただいた詩集に、意味のわからないのがたくさんあったの。」

道江はそう言って、手提から一冊の小型な美しい本をとり出した。

次郎は、しかし、もうその時にはそとを見ていた。そして、しばらく遠くに眼をすえていたが、

「僕、きょうはそれどころではないんだよ。」

と、急に熱のこもった調子になり、

「大変なんだから、僕たちの学校が。」

「大変って? ……何かあったの?」

と、道江も本を握ったまま、眼を光らした。

「朝倉先生が学校をやめられるんだよ。」

「朝倉先生? あのいつもおっしゃる白鳥会の先生でしょう。」

「そうだよ。」

「どうしておやめになるの?」

「それが僕たちにはわけがわからないんだ。」

次郎は、きょう学校で、生徒たちの間に噂されていたことのあらましを話した。それによると、つい一週間ほどまえ、朝倉先生は校長といっしょに県庁に呼び出され、知事から直接の取調べをうけたが、すぐその場で辞職を勧告された。