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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
私は、あす一日あれば、一般のあいさつまわりは済ませるつもりだ。そのあとで、夕方の散歩がてら、ゆっくりおうかがいするのもかえっていいね。」
次郎は、きいていてうれしかった。また、先生夫妻の手さばきのいいのに感心もした。が、同時に、彼の頭に浮かんで来たのは学校の送別式のことだった。彼は先生夫妻をびっくりさせるほどの性急さでたずねた。
「すると、先生、学校の送別式はいつなんです。」
先生夫妻は顔を見合わせた。次郎は二人の眼つきから、直感的にある秘密を見て取ったような気がした。彼はいよいよせきこんだ調子になり、
「まだ学校からは何ともいって来ないんですか。」
「何ともいって来ないことはないさ。」
朝倉先生は考えぶかく答えて、眼をふせたが、すぐ笑顔になり、
「実は、私の方で、まだはっきりした返事を学校にしてないんだよ。」
「どうしてです。」
「いつがいいか、それがまだ私にもはっきりしないのでね。」
「でも、ほかの方へのごあいさつまわりは、もうきまっているんでしょう。」
「そうだ。それは早くすまして置く方がいいんだから。」
「学校の方はおそい方がいいんですか。」
「おそい方がいいというわけでもないが、なるだけうるさいことがないようにしたいと思ってね。