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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

僕はそう信ずる。」

「しかし――」

と、この時、平尾が近眼鏡の奥の眼をしばたたくようにしながら、めずらしく口をきった。

「本田は、いったい、どんな方法で血書や血判をあつめるつもりなんだい。まさかそんなことを全校生徒に強制するわけにもいくまいし。」

「そりゃ無論さ。こんなことはみんなの自由意意でなくちゃあ、意味をなさんよ。だから、僕は、強いて全校生徒からそれを集めようとは思っていない。出来れば五年生ぐらいは全部加わってほしいと思うが、それが無理なら、校友会の委員だけでもいい。それが無理だというのなら、有志だけでも仕方ないさ。」

「しかし、こんなことは、めいめいの自由意志にまかしておくと、ほとんど加わる人がないし、ちょっと勧誘すると、強制になってしまうものだよ。君はそんなことについても考えてみたかね。」

「考えてみたさ。僕が一ばん考えたのは、その点だったんだ。」

「では、どうするんだい。」

「僕は、まず僕ひとりでやる。」

「君ひとりで? しかし、それを誰も知らなかったとしたら、どうなる。」

「少くとも、君たちだけは、現にもうそれを知っているんだ!」

次郎は、それが相手に対する強制を意味し、従って彼自身矛盾を犯しているということに気がつかないのではなかった。