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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

」

大きい生徒たちがぞろぞろと立ち上った。

「菓子袋はまだやぶいちゃいけないよ。あとで茶話会の時にたべるんだから。」

次郎はそう言うと、先にたって下におりた。あとに残った小さい生徒たちは、うつむいてくっくっといつまでも笑っていた。

朝倉先生はその間に部屋の様子を見まわした。文庫はちょうど自分のうしろに据えてあり、きちんと整頓されていた。その右上の位置に「白鳥入芦花」の額がかかっていたが、天井のない部屋の、低い桁にひもでつるし、下縁を壁の中途に小さな横木をわたしてささえてあったので、低すぎて、あまり見ばえがしなかった。しかし、朝倉先生は、うれしそうに、しばらくそれを見ていた。良寛の歌を書いた掛軸は文庫の左がわにつるしてあった。

そのうちに、大きな汁鍋が二つと握飯に沢庵や味噌漬を盛りあわした、鉢や、重箱や、切溜などが十ちかくも運びこまれた。汁鍋は釜敷を置いて二ヵ所に裾えられ、鉢や、重箱や、切溜は、適当の距離をおいて、古ぼけた畳のうえにじかに置かれた。

二三人が箸と椀を配ってあるいた。

先生夫妻と俊亮のまえだけには、会席膳が置かれたが、それには箸と何もはいっていない椀や皿がのせてあるきりだった。