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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
で、ついでもらったサイダーにも口をつけず、むっつりしていた。
そのあと、夫人が何度も出はいりして、羊かんやら西瓜やらを運んで来たが、そのたびごとに、少佐は、これまでに訪ねて来た生徒たちの噂をもち出して、夫人との間に冗談まじりの会話をとりかわすのだった。それは、いかにも自分たちが生徒に親しまれているのを次郎に示したがっているかのようであった。その中にはこんな対話もあった。
「しかし、こないだの鋤焼会には弱ったね、暑くて。」
「ほんとに、八畳の間に三つも七輪を置いたんですもの。生徒さんて、夏も冬もありませんわね。この暑いのに、わざわざ鋤焼をおねだりなさるなんて。」
「わしらも、士官学校時代には、真夏でもよくやったもんさ。」
「でも、みなさんは面白い方ばかりですわね。」
「それぞれに何かかくし芸までやるのには、わしもおどろいたよ。」
「あの詩吟のうまい方、何という方でしたっけ。あの時はじめていらっした方ですけれど。……」
「馬田だろう。」
「そう、そう、馬田さん。……あの方のお父さんは県会議員ですってね。」
「そうだ。今どきの議員にしちゃあ、めずらしい議員だよ。非常な国家主義者でね。