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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

生意気な! という気持が胸をつきあげるようだった。サイダーや、羊かんや、西瓜が、運ばれたままちっとも手をつけられず、テーブルの上にならんでいるのを見ると、いよいよ腹が立った。しかし、腹を立ててしまっては、せっかく私宅にひっぱって来た甲斐がない。学校でならとにかく、私宅にまでひっぱって来て失敗したとあっては、配属将校の面目にもかかわる。それに、こういう頑固な生徒を改心させてこそ、思想善導の責任も十分果せるというものだ。そう思って彼はじっと腹の虫をおさえた。そして、強いて微笑しながらたずねた。

「どうだい、わしの気持はわかるかね。」

「わかります。それで、どんなことですか、先生が僕にききたいと仰しゃるのは。」

次郎はもう面倒くさそうだった。

「いや、大したことでもないさ。どうせ大たいわかっていることでもあるし、――」

と、少佐はわざとのようにそっぽを向いて言ったが、

「つまり、大事なのは君らの思想なんだ。それで、朝倉先生が最後にどんなことを君らに言われたか、それがききたいんだ。それをきいたうえで、なお君に話すことがあるかも知れんがね。」

次郎はちょっと考えた。