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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
次郎にはまるでわけがわからなかった。少佐自身としては、そんな表現を用いたことが何か哲学者めいた、一世一代の思いつきのように思え、また、それがきっと次郎の急所をつくにちがいないと信じ、内心大得意でいたが、次郎にしてみると、迷信などという言葉は、あまりにも自分とは縁遠い言葉だったのである。
二人はただ眼を見あっているだけだった。
「わからんかね。」
少佐がしばらくして言った。
「わかりません。僕が迷信家になりそうだって仰しゃるんですか。」
「そうだよ、もうすでに迷信家になっているんだよ。」
「どうしてです。」
「朝倉先生の言われたことだと、君は無条件に信じているんだろう。」
今度は多少の手ごたえがあったらしかった。次郎はじっと考えた。しかし、間もなく彼はきっぱりと答えた。
「信ずる価値のあるものを信ずるのは、迷信ではありません。」
少佐は二の矢がつげなかった。しかしぐずぐずしているわけにはいかない。
「価値のあるなしは、どうして決めるんだ。」
「自分で決めます。」
「すると朝倉先生が言われたから何もかも信ずる、というわけではないんだね。」
「むろんです。自分で正しいと思うから信ずるんです。