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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
次郎は真青な顔をして、頬をふるわせていた。少佐の顔も青かった。彼は歯を食いしばって次郎をにらんでいたが、ふうっと一つ大きな息を吐き出すと、言った。
「それほど強情を張るんでは、もう仕方がない。せっかく君のために計ってやるつもりだったが、わしもこれで手をひく。もう用はないから帰れ。」
次郎はきちんとお辞儀をして部屋を出た。少佐は部屋につったったまま、そのうしろ姿を見おくった。玄関で、次郎が靴をはき終ってうしろをふりかえると、洋間と反対側の日本間の入口から、女の顔がのぞいていた。それはあざけるような眼をした少佐夫人の真白な顔だった。
そとに出ると、彼の気持は案外おちついていた。言うべきことを憚らず言った、というほこらしい気持にさえ彼はなっていた。急にのどの渇きを覚え、むしょうに水がのみたかった。彼は駅前に公共用の水道の蛇口があるのを思い出し、大急ぎでそこまで行きつくと、存分にのどをうるおした。そして、ほっとした気持になって帰途についたが、間もなくまた思い出されたのは、朝倉先生の険しい眼だった。それは不思議なほどあざやかに彼の眼に浮かんで来た。
とびあがり者!