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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
「そうだよ。だから、僕、帰ってから大沢君と二人で、父さんがそれをどう考えているかたずねてみたんだ。しかし、父さんは、次郎のことは次郎にまかしておくさ、と言ったきり、まるでとりあってくれないんだよ。」
次郎は、父の自分に対するそうした信頼の言葉をきくのが、今はむしろ苦痛だった。
彼は考えた。自分はゆうべの会合のことで処罰される理由は少しもない。もしそれを理由にして学校が自分に退学を強いるとすると、それは権力の不正な行使以外の何ものでもないだろう。しかし、きょう自分が曾根少佐に対して言った言葉の中には、世間の常識から考えて、たしかに不遜なものがあったようだ。それは、考えようでは、もうそれだけで退学処分の十分な理由になるのかも知れない。――もしそうだとすると、自分は、父の自分に対する信頼を裏切ったことになりはしないか。――
しかし、また、一方では、彼はこんな気もした。父は自分が曾根少佐のような卑劣な人間に屈従することを決して喜びはしない。かりに自分が、少佐にこびることによって、ゆうべのことを帳消しにされ、幸いに学校を卒業することが出来たとしても、父はそんな卒業を軽蔑こそすれ、決して心から祝ってはくれないだろう。