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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

実は、これまで誰にも話すまいと思っていたんだが、そんな宣伝をする奴は馬田にちがいないと思うから、馬田のためにも言って置く必要があるんだ。――」

そう言って彼は、彼がこれまで道江のために馬田に対してとった態度をかくさず説明した。彼は、しかし、説明しているうちに、心の奥に何か知ら暗い影がさすような気がして、自分ながら自分の言葉の調子がみだれるのをどうすることも出来なかった。彼はその影をはらいのけるように、最後に調子を強めて言った。

「僕には何もやましいことはない。僕は僕の信やることをやったまでだ。それがいけないというんなら、もう仕方がないさ。しかし、君らだけには信じてもらいたいね。」

梅本も新賀も、むしろ驚いたように次郎の顔を見つめていた。すると、次郎は、また淋しく微笑して、

「とにかく僕ひとりが犠牲になれば、何もかもそれで片づくんだ。そう思うと、女の問題だろうと何だろうと構わんという気もするね。ただ僕が心配しているのは、送別会のことで君ら二人に迷惑がかかりはしないかということだ。あれは僕があくまでも全責任を負うよ。実際責任は僕にあるんだからね。そのつもりで、学校が何と言おうと、君らは頑張ってくれたまえ。