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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

その眼にも、もう涙がにじんでいた。

次郎はしばらくして顔をあげたが、

「先生だけにでも、僕の気持、よくわかっていただいて、僕はうれしいのです。もういつ処分されてもいいんですから、校長室につれていって下さい。」

「校長室になんか、行かなくてもいいんだ。君が得心してくれさえすれば、それでいいんだから。」

「しかし、校長先生から言い渡しがあるんでしょう。」

「言い渡しなんかないよ。諭旨退学ということになっているんだ。」

「諭旨――すると僕の方から退学願が出せるんですね。」

次郎は眼をかがやかした。形式だけでも自発的に退学が出来るということが、妙にうれしかったのである。

「そうだよ。それもきょうあすでなくてもいい。もし近いうちに転校先でも見つかるようだったら、その方の手続きをしてもいいんだ。」

「それが出来るんでしたら、僕、朝倉先生にお願いしてみたいんです。」

「それがいい。私からもお願いしてみよう。東京には私立も沢山あるしね。」

次郎は、もう処罰されるために呼び出された生徒のように見えなかった。

黒田先生は淋しい笑顔になって立ち上りながら、

「じゃあ、君、ここでしばらく待っていてくれたまえ。