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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
04 第四部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页
」
「新賀と梅本です。今日は、默っていても、きっと学校のかえりに来ると思います。」
次郎はしんからうれしそうに答えた。
「大巻のうちにも、みんなで来て下さるように、そう言っとくといい。徹太郎叔父さんと道江さんには是非ってね。二人とも、おまえのことは誰よりも気にかけていたようだから。」
俊亮はそう言って歩き出したが、あとについて行く次郎の心には何かまた暗いかげがさしていた。道江の名は、もうどんな場合にも、彼の耳に、軽い風のような快いひびきをもつものではなかったのである。
*
次郎の生活記録の第四部をここで終る。考えてみると、この記録は、次郎の生活の中の、わずかに二十日にも足りない期間の記録でしかなかった。その点からいって、それに費された紙数は、これまでの記録にくらべて、あまりにも多過ぎたように思える。しかし、この短い期間が次郎の一生にとつて持つ意義は、それだけの紙数に値しないほど小さなものであったとは決して思えない。それは、次郎が時代というものに身をもって接触しはじめ、従って大きな社会に実践の足をふみ入れたという点で。また、はじめて恋というものを意識し、その苦悩を味わいはじめたという点で。