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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

俊売はトマト畑にしゃがんで、しきりにわき芽をつんでいた。どこかに出かけて帰って来たばかりなのか、或はこれから出かけるところなのかいつも外出の時に着る白の詰襟服にカンカン帽をかぶり、ステッキまでもっている。次郎が「ただいま」と言うと、ちょっとふりむいて、「きょうはおそかったね。」と言ったきり、わき芽をさがすのに夢中である。

「きょうは校友会の委員会だったんです。朝倉先生のことで。」

次郎は、そう言って、俊亮のすぐわきにしゃがんだ。

「そうか。私もきょうは朝倉先生をおたずねして今帰って来たところだ。」

次郎はおどろいたというよりも、むしろぽかんとして父の顔を見た。

俊亮はただ微笑していた。次郎はそのうちにやっと自分をとりもどしたが、何をどうたずねていいかはまだわからなかった。父が、ゆうべのきょう、さっそく朝倉先生を訪ねたということが、彼にとってはあまりにも意外のことだったのである。

「先生にはお前もながいこと特別のお世話になっていたし、ちょっとごあいさつをしておきたいと思ってね。」

俊亮は、トマトのしげみをのぞきこみながら、しばらくして言った。次郎は、それで、またあきれたように父の顔を見た。