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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 页

青空文庫

たしかに思慮の足りないやり方だし、それに文明的ではないからね。しかし人間の真実な気持というものは、そのあらわれ方がどうであろうと、やはりうれしいものだよ。私はそれを味わうだけは素直に味わいたいんだ。むろん私には私の行く道があるし、君の真実な気持を味わったからって、その道まで変えるわけにはいかないがね。」

次郎は感激と失望の旋風の中に、やっと身をささえているだけだった。あふれて来る涙が膝の上につっぱった腕をすべって、まだらに縁板をぬらした。

「それはそうと――」

と、朝倉先生はわざと次郎から眼をそらしながら、

「学校の様子はどうかね。血書はやはり出したのか。」

「ええ……出しました。」

「君自身で?」

「いいえ、総務二人に新賀と梅本とが代表になったんです。」

「むろん校長先生に出したんだろうね。」

「ええ。しかし、もう県庁でも見ているんでしょう。校長先生が県庁にそれをもって行かれたそうですから。」

「そうか。」

と、朝倉先生はしばらく考えこんだ。それから、伸びあがるようにして、生垣ごしに門の方を見、何度も首をふっていたが、

「そうか。じゃあ君はきょうここに来るんじゃなかったね。