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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
」
次郎は、言われるままに急いで階下におりた。そして洗面をすまして、梯子段のところまで来ると、恭一がもう次郎の筆入と帽子とをもっておりて来ていた。筆入には、鉛筆、小刀、メートル尺、消しゴムなど、試験場に入用なものが全部入れてあったのである。
二人は、すぐ台所に行って、ちゃぶ台のまえに坐った。飯を食べながら、昨夜来はじめてしみじみとおたがいの顔を見あったが、どちらも相手の顔色がいつものようでないのに気づき、ともすると眼をそらしたがるのだった。
お祖母さんが仏間の方から出て来て、ちゃぶ台につきながら、じろりと次郎を見た。しかし何とも言わなかった。きのうの朝は、恭一が次郎のために生卵をねだったりしたが、きょうは誰もそんなことを思い出すものさえなかった。
お祖母さんは、それからも、じっと坐って二人の顔を見くらべていたが、
「恭一、お前、顔色がよくないようだよ。今日は次郎について行くの、よしたらどうだえ。」
そして、わざとのように、恭一の額に手をあてて、
「少し、熱があるんじゃないのかい。」
恭一は、その神経質な眼をぴかりとお祖母さんの方に向けた。が、すぐうつむいて、