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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
「芸能文化」1942(昭和17)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页
一年ごとに鍬を入れる者が殖えた、そして今では千波ヶ原に七軒の農家ができ、ほとんど大半が耕地になっていた。
五百旗母子は七年作り取りで、そのあとの年貢もきわめて安いきめで借りた。むろん不毛の地として誰も手をださない所だったから、くるまやにしては問題にしていなかったのだ。それがしだいに開墾され、作物の出来も悪くないようになったので、これはと思いついたのであろう、二三年まえから年貢をあげたいと云いはじめた。農夫たちはしかしきびしくそれを拒んだ、――五郎兵衛さま母子のおかげでこの千波ヶ原は生きたので、そうでなければまだ荒れ地のまま捨てられてあったに違いない、だから年貢は初めにきめられたとおりが当然で、今になってあげる理由はない筈だ。かれらはそう云った、そのときはそれで済んだ。しかし六造は諦めなかった、こんど五郎兵衛が江戸へいっている留守に、また農夫たちを呼びつけて年貢増しを云いわたした。
「そのときくるまやのご老人が」とお梶は話をつづけた、「あまり無礼なことを申しましたのでおばさまはたいそうお怒りになり、五郎兵衛は中納言さまの御家来でりっぱな武士です、そのようなさもしい心はもっておりませぬと、それはきついお声で仰しゃいました」