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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
「芸能文化」1942(昭和17)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页
「それでくるまやへ寄ってみたのでございますが、あちらではまた妙なことを申しておりました」熊七がそう云って、同意を求めるようにみんなの顔を見まわした。「妙なこととはなんです」「こなたさまと早く係わりを切ってしまえと申すのです、こなたさまに係わっていると、いまに大変なお咎めをうけると申すのです」「ほう、それで、そのわけも云いましたか」「わけは申しませんでした、訊きましても笑うばかりで、ただ早く縁を切れとだけ繰り返しておりました」
五郎兵衛は考えさせられた。くるまやの口ぶりで、母の災厄はかれの訴訟によるのだということはたしかになった。しかし、どうやら思ったほど単純ではないようだ。代官所で理由を説明しないのもなにか普通でない事情があるからではないか、「それにつきまして、帰る途中みんなで相談を致したのですが、ここはくるまやの云うとおり年貢増しを承知することにしてはどうか、そうすれば面倒が早くかたつくのではないか、そう話しあってまいったのでございます」
「まあお待ちなさい」五郎兵衛はさえぎって云った、「みなさんのご心配はかたじけないが、年貢の定めは子孫の代までのことだから、この場をきりぬけさえすればよいというような考えかたはいけない、そこをよく相談するとしよう」