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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,601 字 · 41 页
「それでその、飯なんぞどうするんだ、なにか当はあるのか」
「――なんにも、ない」
「ないったって、そんなおめえ、それじあかつえて死んじまうぜ」
「――まあそうだろう」
男はまた頤を撫で、ぼんのくぼを掻いた。こちらを見たり、肩をゆすったりして、なにかあいまいなことを云って、不決断にいちど出てゆこうとした。が、すぐ引返して来て、
「しようがねえ、冗談じあねえ」
こう云って赤児の頭ほどの風呂敷包を腰からとり、成信の前へどさりと置いた。
「まさかおめえが飢死にをするってえのに、おれがみすててゆかれるもんじあねえ、とんだところへへえっちまった、こんなべらぼうなはなしがあるもんか、――だが、まあしようがねえ、なんとかするから、これでも食べて待っていねえ」
「――おまえそれで、どうするんだ」
「どうするったってどうしようもねえじゃねえか、なんとかするよりしようがねえ、まあいいから此処に待っていねえ」
男は怒ったような顔でどこかへ出ていった。
――土地の人間ではないな。
成信はこう思った。この附近はいうまでもない、城下町の者でさえ、この鬼塚山の御殿が廃屋であり、近づくことを禁じられ、それを犯すと罰せられることを知っている。