轻松读懂日语经典作品
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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「君というのは、実に因果な性分だね。君は齢をとると、きっと意地悪爺さんになるよ。おれが保証してもいい」
私は返事をしなかった。電熱器の薬罐から、二杯目の茶をいれて飲んだ。
「それで――」
ゆっくり飲み干して、私は訊ねた。彼は疲れたようにかるく眼を閉じていた。瞼の色がうすぐろかった。
「君の場合、ずっこけた時、弥次馬は集まらなかったかね?」
「集まらなかった。集まるもんかね」
彼はけだるく瞼をあけた。
「状況が違うよ。それに僕は美人じゃないし、中年男がずっこけただけの話だからね」
「腰、痛むかい?」
痛そうに体を動かしたので、私は聞いた。
「いや。腰じゃない。痛みは別に移ったんだ」
やはり矢木栄介はその時、すこし酔っていた。講義が済んで、同僚と安バーに行き、ハイボールを三杯飲んだのだ。同僚と別れて、バスに乗った。
夕刻近くで、バスは次第に混んで来た。車内の温度の高昇と酔いのために、栄介はねむ気をもよおして来た。頭をもたせてうつらうつらしている時に、車掌が停留所の名を呼んだ。彼ははっとして立ち上り、乗客を押し分けながら、入口に突進した。
停車時間が長引くので、若い女車掌は露骨なふくれっ面をしていた。