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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

学校の冬休みはまだ終っていなかったから。

「その部隊の兵舎で、初年兵教育を受けたのか」

栄介は言った。

「あいつ、帰りたかっただろうなあ」

葬儀屋に行った時も、そうであった。城介は栄介宛にしきりに、一週間でいいから暇をもらって故郷に帰りたい、父親に頼んでみて呉れ、という手紙をよこした。故郷の海で泳いだり、魚釣りをしたい、などとも書いてあった。一度それを福次郎に通じたが、もちろんダメであった。

「一度奉公に出した以上、身柄は向うに委せてある」

福次郎はこめかみをびくびくさせながら言った。

「身勝手な望みは捨てて、仕事に精を出せと、そう返事しろ」

栄介はその旨を書き送り、その後の手紙は握りつぶすことにした。なまじ返事を書けば、余計里心がつのると思ったからである。しかし城介の里心は、単純に故郷の風物に接したいと言うものではなかった。言葉の問題である。栄介が高等学校に入った時、城介から祝いの手紙が来たが、その中で、近頃はやっと落着いて生活に慣れた、あの頃帰りたかったのは、国訛りを笑われて、それがつらかったのだ、と書いてあった。

『ことにここのお内儀はひどい女で、主人がいない時よそから電話がかかって来ると、かならずおれに出させる。