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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「でも、結局それが、城介君の運命を決定したんだね。縫工兵にでもなれば、生きて還れた筈です」
生活は大幅に楽になった。毎日病院に通って、講義を受ける。夕方宿舎に戻る。第十二聯隊から来たのは十五名で、よその中隊の宿舎を二棟借りて、そこで寝起きした。宿舎は左雲と同じく民家である。だから直接の監督者はいない。同じ土塀の中に階級の上の者はいるが、彼等は自分の中隊のことで手いっぱいで、よそ者の衛生修業者などにかまってはいられないのである。
「初年兵の苦労の大半は、下士官や古兵のものを洗濯したり、ぺこぺこしたり、殴られたりすることだね。それがいっぺんになくなったわけです。病院に行く時だって、代りばんこに指揮者になって、号令をかけて門から出て行く」
「学科というのは、どんなんだね?」
栄介は訊ねた。
「たとえば包帯の巻き方とか――」
「いや。人体の構造学から解剖学、生理学や薬物学、一応のことを全部、半年間に叩き込まれるわけですよ。城介君は理解が早かった。頭が切れるというか、そんなところがありましたね。でも、怠け者といえば怠け者だったね。怠け者だったが、要領はよかった」
各科の軍医たちから講義を受ける。