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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

時々試験がある。城介はヤマのかけ方がうまかった。だから同室の兵隊は、城介からヤマを教わって、いつもいい成績を取った。

「そうかね」

何か心の痛みを感じながら、栄介は答えた。

「自分じゃ要領が悪く、いつもへまばかりやってると、思い込んでいたよ」

「そうでもないでしょう。夜土塀を乗り越えて、パイチュウを密輸して来るのに、一度も彼は見つかったことはなかった」

そんな小さなことではうまく立ち廻るが、肝腎なところで失敗するのだと、栄介は答えようとして止めた。

「要領がよ過ぎて、失敗したこともあったな。城介君は眼をあけたまま、居眠りをする特技を持っていたんです。それを講義中に発見されて、つまり指名されても眼は開いたままミイラのように黙っているんで、居眠りをしていたと判ったんだね。丁度泌尿器科の講義だった。早速罰に尿道洗滌の実験台にさせられて、その日一日痛え痛えとこぼしていたよ」

十月、修業が終った。一本立ちの衛生兵となると同時に上等兵に進級する。一般兵より早い。衛生兵だけ特別扱いにするのは、投薬などの命令権を与えるためである。

城介は衛生上等兵として、大同にとどまることになった。