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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
それだけだよ」
「しかしだね、幸伯父が死ぬと、君は俄然彼の生涯に興味を持ち出すと、ぼくはにらんでいる。その遺品や何かを手がかりにして――」
私はすこし語調を強めた。
「君は誰かが死ぬと、にわかにそれに興味を持ち始めるのだ。そうぼくは思う。肉親の死から、君は精神的な栄養をむさぼり始めるのだ。たとえば死体にたかる鴉のようにさ」
「鴉?」
栄介はしゃがれた声でわらい出した。
「死骸にたかる鴉なのか。このおれが?」
約束の時間にすこし遅れて、私は栄介の家を訪ねた。始めて会う幸太郎は、私の描いていた映像とは、いちじるしく、違っていた。小柄でしなびていて、眼が不安そうにびくびく動いていた。コブも巨大なものと思っていたのに、首のつけ根にちんまりとくっついているだけだ。私が挨拶すると、口をもごもごさせて、意味不明な声を出した。それは猫の声に似ていた。
車の運転手は若い男で、栄介を先生と呼ぶところを見ると、学校での教え子らしい。
「伯父さん」
栄介は幸太郎に呼びかけた。
「伯父さんは助手席に乗りなさい。その方が景色がよく見える」
栄介は幸太郎と体を接して乗るのは、イヤなのだろう。